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『罪の轍』奥田英朗【あらすじ/感想】臨場感あふれる刑事vs容疑者の攻防がここに!

こんにちは! 時代背景が目に浮かぶネイネイ(@NEYNEYx2)です。

今回は、奥田英朗さんの『罪の轍』を読みましたので、あらすじや感想・レビューをご紹介します。

東京オリンピックを翌年に控えた1963年におきた事件を元に描かれた作品を味わってみてはいかがでしょうか。

 

こんな人におすすめ

  • 社会派の小説が好きな人
  • 犯人を追い詰める刑事、容疑者とされる者の心情と情景が味わえる小説が好きな人
  • 実際におきた事件を元に描かれた小説に興味がある人

 

目次(タップできます)

『罪の轍』奥田英朗【あらすじ&概要】

あらすじ

翌年にせまる東京オリンピックに街が活気づいている昭和38年。テレビや電話が各家庭にちらほらと普及し始めた中でおきた、浅草の男児誘拐事件に日本中が暗い闇に覆われる。

捜査線上に浮上する、まわりから「あいつは莫迦だ」と呼ばれる北国訛りの男…。警察の不手際、過熱する報道、事件に関心を寄せる人びとの心理、それらの生々しさが心に訴えかける。

おすすめポイント

実際におきた「戦後最大の誘拐事件」を元に描かれた、社会派ミステリー。

被害者、容疑者、警察の目線で語られることで、それぞれの感情が生々しく描かれている。この事件の終着点がどこに向かうのか最後まで目が離せなくなる。

 

主要な登場人物

  • 落合おちあい昌夫まさお・・・警視庁刑事部捜査一課五係の刑事。仲間内では「オチ」と呼ばれている。
  • 岩村いわむらすぐる・・・捜査一課五係でいちばん若手の新米刑事。仲間内では「イワ」と呼ばれている。
  • 仁井にいかおる・・・捜査一課五係の離婚歴のある独身刑事。ポマードで髪を撫でつけた姿がニヒルなことから「ニール」の愛称で呼ばれている。
  • 大場おおば茂吉もきち・・・南千住署の捜査員。かつては、捜査一課に長く所属していたこともある古株の刑事。
  • 宇野うの寛治かんじ・・・北海道の礼文島から逃げてきた。空き巣の常習者。また、脳に軽度の記憶障害がある。
  • 町井まちい明男あきお・・・浅草を拠点にする東山会の下っ端のヤクザ。
  • 町井まちいミキ子みきこ・・・明男の姉で、母親が経営する山谷にある町井旅館を手伝っている。

 

刑事の独立性

刑事というのは、それぞれが勝手に行動して自分こそが犯人を捕まえて手柄をあげるのだと息巻いており、組織の中にいるが、まるで個人事業主のよう振る舞いで個々が独立しているというのだ。

大きな組織になればなるほど、出世して上に立つ人は限られます。限られた椅子をめぐり熾烈な競争が繰り広げられるのは容易に想像がつきます。

また、刑事部内において縄張り争いも絶えず繰り返されており、管轄外の聞き込みや捜査をするのに一苦労する様子も描かれており、組織の負の一面が見え隠れしているようでもある。

ネイネイの困り顔
ネイネイ
大組織だからできること、一方で、大組織だから抱える悩みもあるんだね。

 

犯人の音声テープ

捜査の行き詰まりにより、犯人の音声テープをテレビにて公開する決断をくだした。これにより、正義感を駆り立てられた市民が探偵の真似事を始める事態におちいるのである。

悲惨な事件であればあるほど国民の関心も高まり、被害者にたいして感情移入をしやすい。世の注目が集まった事件で、犯人に繋がりそうな情報が公開されれば、必然的に一般市民による情報が飛び交うことになる。

公開捜査は、全国から情報提供を得ることができる一方で、真偽のわからない情報を一つ一つ確認しなければいけない重労働を引き起こす。公開捜査も一長一短なのだと思えてくる。

ルーシー
ルーシー
国民の感情ほど、厄介なものはないのかもね。

 

電話の逆探知

昭和38年のころは、電話の逆探知を捜査で使用した前例がなかったようです。そのため、電電公社に依頼をしても「通話の守秘義務」により拒否されてしまう。そのことで、犯人からの電話も、報道後に被害者の家に寄せられるイタズラ電話も、所在の特定をすることができずにいた。

こういった、逆探知が使用できないなどの時代の違いを要所要所に感じさせる。電話の普及、交通手段、情報を得るための手段、そのどれもが、現代とは少しずつ違う状況を味わえるのも、この作品の魅力の一つではないでしょうか。

技術の進歩で防げるという事柄と、逆に、高度成長による急速な環境の変化や技術の進歩に、捜査のノウハウが追いつかずに戸惑いを覚え翻弄されていく姿には、これまで出来なかったことができることでプラスに働く反面と、今までにない状況に対応しなければいけないマイナスの面が常に存在していることに、あらためて気づかされます。

モンブラン
モンブラン
技術の進歩で、良い面・悪い面もあるんじゃな。

 

九十九パーセントは無駄足

容疑者の足取りを追うために、考えられる行動をしらみつぶしに聞き込みにあたる場面で、今おこなっている捜査が無駄足になる可能性もあることにふれ、仁井が落合と岩村に次のように指示する言葉が特に印象深かった。

刑事の仕事とはそういうものだ。九十九パーセントは無駄足になる。それを覚悟の上で、一パーセントを見逃さないようにしよう。いいな

(P423より)

誰しもが結果は残したいと考える。そこで、無駄と思える内容を排除して作業の効率化を図る。しかし、本当はその無駄と考えていたことの中に大事なモノがあるのかもしれない。

一見すると失敗の連続でも、それは正解に近づくために必要なことで、その積み重ねが最大の結果をもたらすのかもしれないと思わせてくれる。

クライド
クライド
その、うまくいかなくても折れない心に感嘆しますね。

 

感想・レビュー

なかなか進展しない捜査状況に、メディアや市民の過熱する感情は、時代が違えど現代となんら変わりないように思える。感情を揺り動かされた人びとは、優しさや頼もしさを感じることもあれば、一方でいたずらや誹謗中傷をする悪意ある者も少なからずいることが、居た堪れないとともに胸が締めつけられる。

過去におきた事件から、報道のあり方、それを見聞きする視聴側の人びとがどのように行動すべきなのか考えさせられるものがある。時代が移り変われば、技術はどんどん進歩していく。ただ、それを扱う人びとは、はたして変化しているのだろうか?っと思わず疑問に感じてしまう。

謎解きを楽しむというよりは、犯人を刑事がどのように追い詰めていくかという捜査の過程だったり、容疑者とされる者とその周りの人びとの心情や情景をリアルタイムに味わえる作品になっている。昭和38年という時代背景や生活環境の違いを感じさせる部分もあれば、今とさほど変わらない人びとの心情や行動には感慨深いものがある。

ネイネイの笑顔
ネイネイ
人びとの心情や行動には、考えさせられるものがありますね。

 

まとめ

犯人を追い詰める刑事の執念と、容疑者の抱える闇を描く物語。

半世紀前の東京オリンピックを翌年に控えた時代におきた大事件を体験してみてはどうでしょうか。

それでは、まったです。 (‘◇’)ゞ

 

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この記事を書いた人

30代の元開発エンジニア。本の書評多め(ミステリ、ファンタジー、気になった本を読む雑食系)。現在は、自由な働き方で生活していけるように、日々の『喜び・怒り・悲しみ・楽しみ』を書きつづっています。

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