こんにちは! 海か山と問われたら、海派のネイネイ(@NEYNEYx2)です。
今回は、伊坂幸太郎さんの『シーソーモンスター』を読みましたので、あらすじや感想・レビューをご紹介します。
「海族」と「山族」の対立を描くこの物語を堪能してみてはいかがでしょうか。
こんな人におすすめ
- 共通のルール設定で描かれる「螺旋プロジェクト」に興味がある人
- 気に入らない相手、相性の悪い相手、苦手な相手がいる人
- 2つの時代をまたいで繰り広げられるエンターテインメントを見てみたい人
『シーソーモンスター』伊坂幸太郎 【あらすじ&概要】
おすすめポイント
「海族」と「山族」の対立を描くことを共通のルールとした「螺旋プロジェクト」の1作です。
本作では、昭和後期の「シーソーモンスター」と、近未来の「スピンモンスター」2編が収録されています。2編はそれぞれ別の話ではありますが、どこか繋がりのあるストーリーに魅せられてしまいます。
『シーソーモンスター』のあらすじ
どこにでもある普通の家庭に見える北山家。だが、家の中では嫁と姑のバトルが繰り広げられ、北山直人は板挟み状態にあっていた。
ある日を境に姑には「何か秘密があるのでは?」っと嫁の宮子は疑念を抱くようになっていく。その一方で、夫である直人も勤める製薬会社で、ある問題に直面し対応を迫られる…。
『シーソーモンスター』の主要な登場人物
- 北山直人・・・製薬会社の営業職に就いている。嫁姑問題に頭を悩ませている。
- 北山宮子・・・直人の嫁。専業主婦として北山家で奮闘している。だが、直人と結婚する前は、情報機関に勤めていた過去をもつ。
- 北山セツ・・・直人の母親。事あるごとに宮子とはぶつかってばかりいる。
- 石黒市夫・・・生命保険会社のセールスマン。宮子に謎の言葉を残していく、不思議な存在。
裏メッセージ
人と人のコミニュケーションは難しい。それが、嫁と姑になればさらに難易度は増す。相手のいった言葉に「裏メッセージ」が込められていないのかと、勝手に解釈をしてしまう。大抵の場合それは、悪い意味に捉えがちである。
嫌いな友人や上司なら、できるだけ距離をとって会わないようにすればよいが、同じ家に住む家族となるとそうもいかない。1日に何度も顔を合わさなければいけないし、会話をする必要もある。
愛想よく振る舞おうとするが、いざ相手を前にすると感情のコントロールを失ってしまう。そんな嫁姑問題を悩ましくも、どこかコミカルに描かれ、楽しみながら読み進めることができる。
保険料の不正請求
病院を経営している院長の担当を、前任者から引き継いだ北山直人だが、ある疑問を抱いていた。病院の経営はうまくいっているというが、いつ行っても待合で混雑しているということはない。気になった直人は、病院の情報を探ってみて何がおこなわれているのか推測がついてしまった。保険の不正請求をしていることに…。
正義感をつらぬいて悪事を追求するべきか、家族を養うことを優先にし見て見ぬふりをするか選択を迫られていく。人生に選択はつきもので、避けては通れない。その選択により、物事がどう転ぶかわからない。ただ、直人の姿を見ていると後悔のない選択をするべきなのだ、と思えてくるから不思議である。
『シーソーモンスター』の感想・レビュー
お金があり余っていたバブル全盛期の日本。得意先への接待も、今では考えられないほど豪華な内容に「そんな時代もあったのか」とため息が漏れてしまう。お金が余っているにも関わらず、さらに資金を増やそうと画策する人たちには、人間の欲はどこまでいっても尽きないように感じてしまう。
北山直人は、頭脳明晰なわけでも格闘技に長けているわけでもない。それとは対照的に妻の宮子は、頭の回転も早く、格闘技にも長けている。対照的ではあるが、それぞれの魅力が表現されていて物語に引き込まれてしまう。
嫁姑問題にはじまり、姑への疑念、夫の会社の不正問題が交じり合い、次々に事件に巻き込まれる展開には、ハラハラさせられながらも、次の展開に心踊らされてしまう。アクションシーンも多く、スカッとしたい気分のときにはうってつけである。
『スピンモンスター』のあらすじ
時代は2050年の日本。フリーの配達人をしている水戸直正は、新幹線の席で隣に座った眼鏡の男に旧友に手紙を届けて欲しいと仕事の依頼を受けることになる。この依頼をきっかけに事件に巻き込まれていく…。
迫り来る敵に立ち向かうべく、必死の攻防が繰り広げられる。
『スピンモンスター』の主要な登場人物
- 水戸直正
人力で運ぶ、フリーの配達人をしている。幼少期に車の事故で家族を失っている。 - 檜山景虎
警察の仕事に就いている。水戸とは幼少期の車の事故からの因縁がある。 - 中尊寺敦
元研究者で、過去に寺島テラオと同じ大学で人工知能の研究をしていた。現在は、研究の道をそれて、のんびりとした生活をおくっている。 - 寺島テラオ
人工知能「ウェレカセリ」の開発責任者。手書きのメッセージを届ける仕事を水戸直正に依頼する。20年前の約束を果たすために…。 - 日向恭子
ブックライブラリで働いている。水戸直正の彼女で、面倒見の良いところがある。
配達人
デジタル化によりペーパーレスが進み、情報を備えたデータでのやり取りが当たり前になった時代。ただ、デジタルの弱点である、コピーや改変が容易なことや、データの流出に懸念する動きもでてきた。そこで、重要なやり取りは、デジタルではなくアナログを使用し、手書きの手紙を利用する世の流れができていった。そこで、手書きのメッセージを人力で運ぶ仕事をしている「配達人」が重宝されている。
配達人というと公共機関の郵便配達を思い浮かべますが、記録が詳細に残るためにダメなのだとか。そこで、需要が出てきているのが、水戸直正がおこなっている、フリーの配達人なのだそうだ。
現代では、インターネット、メールやLINEなどのは便利なツールであり、使用したことがない人を探すのが困難なぐらいだが、技術がさらに進んでくると、情報を引き出す利便性よりも、情報の信頼性におもむきが変化していくのかもしれないと思わずにはいられない。
人工知能「ウェレカセリ」
寺島テラオが開発を進めていた人工知能「ウェレカセリ」。経験や知識をもとに、物事の先を予測することができる。よくチェス、将棋、囲碁などでAI (人工知能)と世界王者やプロとの対戦がおこなわれているのをニュースで観ますが、ことごとくAIが勝利をおさめている印象があります。
進化した人工知能は、人の生活に欠かせないものになっていくのか、それとも人をおびやかす驚異になっていくのか、考えを巡らせてしまう。
『スピンモンスター』の感想・レビュー
デジタルの記録は何年後でも正確にデータとして残っている。一方で、人の記憶は曖昧なものだ。時間とともに記憶は不鮮明になっていき、最悪の場合には内容が変化してしまうことだってある。
一見すると正確な記憶の方がいいように感じますが、人の記憶ほど曖昧でもいいのではないか、と思わせてくれます。また、多くのものがデジタルに移行していく中で、アナログならではの良さにスポットが当たるところも面白くもある。
時代が変わっても人と人の争いはなくならない。けれど、折り合いをつけ生活していくことはできる。そのことに気づくことが大切なのだと訴えているようでもある。生活していれば誰しもが、相性の合わない相手、苦手な相手に出会うこともあるが、そのようなときにどう行動すべきなのか考えさせられる物語になっています。
まとめ
相性の悪い相手との向き合い方を考えさせられる物語。
「海族」と「山族」の対立を通して、争うことの意味を感じてみてはどうでしょうか。
それでは、まったです。 (‘◇’)ゞ
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