こんにちは! 現実と非現実の境目がわからなくなったネイネイ(@NEYNEYx2)です。
今回は、前作「太陽と乙女」より一年ぶりの、森見登美彦(@Tomihiko_Morimi)さんの『熱帯』を読みましたので、あらすじや感想・レビューをご紹介します。
「だれも最後まで読んだことのない本」に興味ありませんか? そんな謎の本がこの「熱帯」なのです。あなたもこの奇妙な物語の謎を目にしてはいかがでしょうか。
『熱帯』森見登美彦【あらすじ&概要】
あらすじ
沈黙読書会で見かけた『熱帯』は、なんとも奇妙な本だった!
謎の解明に勤しむ「学団」に、神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと、「部屋の中の部屋」…。
東京の片隅で始まった冒険は京都を駆け抜け、満州の夜を潜り、数多の語り手の魂を乗り継いで、いざ謎の源流へ—!(「BOOKデータベース」より)
おすすめポイント
最後までその物語を読んだ者がいない「熱帯」という謎の本。 その謎を解き明かそうと物語は進んでいくが、物語の中に新たな物語が語られる。
そんな構造に戸惑いと謎を知りたいと思う欲とがまざり合い、不思議な感覚にみたされていく。
千一夜物語
本作に幾度となく登場する「千一夜物語」。 千一夜物語もまた不思議な本なのだとか。
これがいわゆる「枠物語」というもので、『千一夜物語』に収められた膨大な物語のほとんどは、シャハラザードがシャハリヤール王に語ったものとして語られる。シャハラザードの語る物語の中に登場する人物がされに物語を語ったりするため、いわば物語のマトリョーシカみたいな状況が次々と発生していく。物語そのものも奇想天外で面白いが、この複雑怪奇な構成も『千一夜物語』の醍醐味といえるだろう。
(P9より)
「物語の中に物語が語られる」この構成は「熱帯」でもみられる。 ある者が語っていたと思ったら、その話が終わる前に別の者が語りだす。
読んでいるほうは頭が混乱してしまいそうになるが、それはそれで他の本では味わえない、この本ならではの魅力ではないでしょうか。
熱帯の冒頭
謎の本といわれる「熱帯」の作者は佐山尚一という。 その熱帯の冒頭は次のようにはじまる。
汝にかかわりなきことを語るなかれ
しからずんば汝は好まざることを聞くならん
(P15~16より)
なんとも謎めいた冒頭であろうか。 しかし、この文章がのちのち物語を面白くしていくキーになっていく。
また、熱帯の物語には佐山尚一も登場しています。 物語の中と物語の外その二つが、現実と非現実を連想させることで、知らず知らずのうちに作品の魔法にかかってしまう。
気づいたときには、現実と非現実の境目がわからなくなっていく不思議な体験におちいる。
サルベージ作業
謎の小説「熱帯」を読んだこちのあるメンバーが集まって読書会がおこなわれているのだという。
お互いの知りうる「熱帯」の記憶を語ることで、失ってしまった熱帯を再現させようとする「サルベージ作業」なるものがおこなわれていた。
それはA4紙を貼り合わせて作った年表のようなものだった。学団が設立されてからというもの、彼らは記憶の底に沈んでいた『熱帯』の断片を持ち寄ってこの紙に書きこんできたという。あちこちに追記がびっしりと書きこまれており、学団員たちの苦心の過程が見てとれる。彼らはこのサルベージ作業によって、『熱帯』という小説の内容をできるだけ克明によみがえらせようとしたのである。
(P65より)
人の記憶ほど曖昧なものはない。 昨日、今日のできごとならまだしも数年前のことなど何らかのキッカケがなければ思い出せない。
サルベージではそうしたことから、他の者と語ることでキッカケを得ようとするのだとか。
カードボックス
「熱帯」の謎を追いかけて京都の町を駆けめぐってたどり着く先に、古道具屋の芳蓮堂(ほうれんどう)がある。 そこで目にとまった小さな古びたカードボックスがあった。
私はそのカードボックスを開けてみました。一見空っぽのようでしたが、古びて変色したカードが何枚か残っているようです。
手前の一枚には不思議な詩のような文章が書いてありました。
(P158より)
この京都をめぐる旅は、ちょっとしたミステリーのようでもあり、謎を解き明かそうと考えたり、次の展開を予想しながら読み進める楽しさもある。
この京都の場面やその他の場面で、物語の表情が変化していくのも、この作品の面白味の一つでもある。
感想・レビュー
物語の中で現実と非現実とが語られることにより、夢と現実の境目がわからなくなるような感覚にさせられる。 また、そのせいもあって夢の中で自身が、大冒険をしているように錯覚してしまう。
あそこで語られていたことが、別の話にひょっこり顔をだしていたなんてこともある。 そのため、一度目に読んで気づけなかった伏線に、二度読むことで気づけたりもする。
この物語は人々の人生のようでもある。 人の数だけ物語は存在しており、その物語は人から人へと渡り歩き、はじまりと終わりを無限に繰り返し続いているように感じられる。
まとめ
物語の中に物語が展開されていく、摩訶不思議な物語。
他の作品では味わうことない、この怪作をあなたも体験してみてはどうでしょうか。
それでは、まったです。 (‘◇’)ゞ
本書に登場する「完訳 千一夜物語」「アラビアンナイト」「ロビンソン・クルーソー」も一緒にチェックしてみてはどうですか。(岩波書店の「完訳 千一夜物語」は全13巻あります)
『熱帯』のPV
コチラの記事もどうぞ
おすすめ記事
コメント