こんにちは! 人知れず背負っているものを考えてしまったネイネイ(@NEYNEYx2)です。
今回は、藤谷治(@yuntachura)さんの『燃えよ、あんず』を読みましたので、あらすじや感想・レビューをご紹介します。
不幸に見舞われたものを救おうとする、周りの人たちの温かみに触れてみてはいかがでしょうか。
『燃えよ、あんず』藤谷治【あらすじ&概要】
あらすじ
人生、何が起こるかわからない(本当に)。
下北沢の小さな書店・フィクショネスには、一癖も二癖もある面々が集っていた。癖の強い店主、筋金入りの「ロリータ」愛読者、大麻合法を真面目に主張する謎の男、大手企業で管理職に就く根暗な美形男性、そして、決して本を買わずに店で油を売り続ける、どこか憎めない女子・久美ちゃん。
そんな彼女に新婚間もなく不幸が訪れる。それから十数年。ある日、久美ちゃんがお店にふらりとあらわれた。同じく懐かしい顔の男を伴って――。(「Google Books」より)
おすすめポイント
ぽんこつの面々がおりなす、どこか笑え、あたたかみの中にも人生の奥深さを考えさせられる物語。
久美ちゃんの幸せをせつに願うもの、娘のことを誰よりも考えているもの、息子のため闘いに挑むもの、そんな話にホロリとさせられ、心に響くものがある。
フィクショネス
オサムさんが下北沢ではじめた小さな本屋それが「フィクショネス」。 貧しかったこともあり、経営方針が独特なものだった。
よそから買ってきて並べればいいのである。古本のことじゃない、神田の神保町には、小規模な本の卸問屋が何件もあって、そこに一軒一軒挨拶をして回り、現金で本を買い取ることにしたのだ。これなら仕入れの金だけあれば店に本を並べられる。それも、自分が売りたい本、好きな本だけを。保証金もいらない。気楽で自由だ。
(P10より)
書店の多くは問屋と契約して、本を卸してもらい委託販売をして売り上げの2割強を利益とするのが一般的なのだとか。委託なので、売れ残りは返品できるメリットがある。
オサムさんの手法は保証金がいらないが、本が売れ残っても返品できないというデメリットを含んでいるということになります。
文学の教室
客足が少なかったこともあり、まずは文学に慣れ親しんでもらおうと「文学の教師」をはじめたのだ。
「文学の教室」と単純な名前をつけて、月に一度、第二土曜日の夜に開くことにした。ひと月に一冊くらい、古くてちょっと難しい本を読んでみませんか、というわけである。一回の「教室」で一冊の本について語り、また参加者の感想や質問を聞く。
(P12より)
出版不況が叫ばれ本が売れないとされている中で、こういった取り組みは重要なことなのでしょう。
最近ではホテルに併設して書籍コーナーを設けて、本を読むことはもちろん、気に入ったものがあれば買うこともできるといったサービスもあるぐらいなので。
由良龍臣(ゆら たつおみ)
「文学の教室」に通ってくるメンバーに由良龍臣がいる。 彼はどこか近寄りがたいオーラがあり、陰気な感じのする男でもあるのだそうだ。
本音と建前がある、というのが常識だというのではありません。人は誰でも、自分の中にある苛立ちを、無関係な人間に暴力的にぶつけたいという衝動を抱えながら生きているが、その衝動を押し隠している、というのが常識なのです。
(P38より)
彼はだいぶ歪んだ心の持ち主でもあり、人が不幸になっていくさまを作り出し、眺めるということをしています。
そのことで、この物語に大きな影響をあたえ展開があらぬ方向へ導かれていきます。 不快に思う部分も含め、それがこの物語を面白くも輝かせているようにも思えます。
感想・レビュー
久美ちゃんの山あり谷ありの人生に幸せを運ばんとする、下北沢の本屋「フィクショネス」に集いし個性的なメンバーたち。 どこか頼りなくもあり、それでいて人情味あふれる物語に胸を熱くさせるものがある。
人は誰しもが事情を抱え生きており、それぞれに背負っている想いがあるのだと気づかされる。 上っ面や表面上だけでは、その人の本質を判断することはできないものだと感じさせてくれる。
まとめ
人はそれぞれに事情があり、それを抱えて生きていることに気づける物語。
癖の強いメンバーがおりなす珍道中に、あなたも笑い、ときに涙してはどうでしょうか。
それでは、まったです。 (‘◇’)ゞ
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