こんにちは! 登場人物と年齢が近いこともあり、共感できるポイントが多かったネイネイ(@NEYNEYx2)です。
今回は、作家デビュー15周年を記念した、辻村深月さんの『傲慢と善良』を読みましたので、あらすじや感想・レビューをご紹介します。
恋愛における選択に悩んで結論を出せずにいるなら、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
こんな人におすすめ
- 20代・30代・40代の結婚を意識している、考えている人
- 理想の相手がわからなくなっている人
- 年頃の子どもを持つ親
『傲慢と善良』辻村深月【あらすじ&概要】
あらすじ
それぞれ30代の西澤架と坂庭真実は、婚活アプリで知り合い、一緒に住んでおり結婚も決まっていた。互いに充実した日々を過ごしていると思っていた。しかしある夜、真実は突如として失踪するのだった。
彼女の居場所を探すため架は、彼女が秘密にしていた過去とある真実を知ることになる…。
おすすめポイント
9月に結婚披露宴をひかえた中で、ある日突然に坂庭真実は姿を消してしまった。
35歳の彼女と、イギリスの地ビールを専門に取り扱う代理店を父から継いだ39歳の西澤架とがおりなす、「婚活」をテーマに人生における選択の迷いや辛さ、難しさが描かれる物語。
第1部が西澤架の章で、第2部が坂庭真実の章の構成により、男女での考え方や心情の違いが対象的に語られる。
主要な登場人物
- 西澤架・・・39歳。東京生まれでルックスが良いが、周りの友達はみんな結婚していて、自分だけ独身でいることに気づいてしまう。
- 柳澤千舟・・・35歳。群馬の前橋で育ち、とても真面目な性格である。進学先なども、すべて母のいう通りにして生きてきた。
ストーカー被害
坂庭真実が行方不明になって、西澤架は警察に居場所を捜索してもらうべく出向く。彼女が以前「ストーカー被害」にあっていたこと、部屋にしまってあったアクセサリーがなくなっていることを伝えたが、警察がくだした内容は意外なものだった。
『真実さんの失踪は、事件ではなく、本人の意思によるものである可能性が高いと判断しました』
(P32より)
事件性が低いとする「根拠」を突きつけられ、さらにストーカーが誰なのかわからない状態では、「できることはない」といわれてしまう。警察が動いてくれないことから、架は自分でストーカーを探すことを決断するのだった。
いっぽうで、なぜここまで事態が悪化するまで、彼女の声にもっと耳を傾けなかったのかという後悔の念が募っていく。
世間体
ストーカーについて坂庭真実は以前、「東京に出てくる前、地元で知り合った人かも」といっていたこともあり、西澤架は彼女の地元である群馬に行くことを決め、彼女の母親に「興信所」を使い少しでも情報を集めようと提案するのだが、難色をしめされてしまう。
真実の母親は、考えるよりまず言葉が先に出る人なのだと、この二日間一緒にいてわかるようになった。声に出してしまってから自分の言いたいことを考える。彼女が伝えたいのは、どうやら「世間体が気になる」ということらしかった。
(P43より)
地方であればあるほどこの「世間体」の存在は大きい。となり近所の結びつきが強く親同士、親戚間のネットワークが張り巡らされ、すぐさま情報が飛び交う。
だが世間体にまどわされ、大切にすべきことが見失われているようにも感じられる。
何パーセント
坂庭真実と付き合うようになり、1年半以上がたったころ西澤架は、仲間内でたびたび「結婚しないのか?」と聞かれていた。架がなかなか結婚に踏みきらないのをみて、女友達はある質問を投げかけてきた。
「あの子と結婚したい気持ち、今、何パーセント?」
(P75より)
架は結婚への思いを答えたつもりでいたが、女友達は「それは彼女への点数そのもの」というのだ。人は自分でも気がつかない間に、相手との距離感や立ち位置をランク付けしているのかもしれない。
友達の優劣、職場の上司や同僚の優劣、家族内での優劣、そうすることで接し方や行動を変化させ、この世の中に順応している。それゆえに生きずらくもあるように思える。
結婚相談所
坂庭真実が地元の群馬にいらことに婚活をしていたことを知り、西澤架は彼女が婚活で訪れた「結婚相談所」にストーカーにつながる糸口がないか尋ねた。
架は自身の婚活の苦い経験から、結婚相談所を営む老婦人に真実の失踪とは関係のない、「婚活がうまくいく人とうまくいかない人の違い」について質問をしていた。
「うまくいくのは、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしていきたいかが見えている人。ビジョンのある人」
(P105より)
自分はこうしていきたいと自身の考えを持っている者は、それに向けて順序だてて進んでいけるが、そうでない者は迷子になってしまう。
自分の意思を明確に持つことの大事さと難しさがそこにあると感じさせられる。
感想・レビュー
30代後半ともなると「結婚」というものが大きく重い存在になってくる。友達、家族、職場の同僚からの言葉に心をわしづかみにされ、チクチクと刃を突き立てられる。結婚をしなければという焦りと、婚活がうまくいかない困難さと疲労感が物語からも伝わってくる。
結婚という要素と、婚約者の失踪というミステリーの要素が掛け合わせることで、知っているようで見えていなかった、心の内に潜んでいる本音が見えてくる。それと同時に自身の怠慢さや傲慢さに気づいていく。
婚活を通して、その人の内面をあぶりだし、人を好きになるとき、選ぶときに、してはいけない教訓を教えられているようでもある。
まとめ
恋愛における自身の心の奥底にある想いに気がつける物語。
あなたもこの本を読んで、自身の恋愛を見つめ直してみてはどうでしょうか。
それでは、まったです。 (‘◇’)ゞ
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