こんにちは! デビュー作品とは思えない、世界観に魅せられてしまったネイネイ(@NEYNEYx2)です。
今回は、伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』を読みましたので、あらすじや感想・レビューをご紹介します。
見知らぬ小さな島での、数日間の奇妙な体験をあなたも味わってみてはいかがでしょうか。
こんな人におすすめ
- 非日常の世界観を味わってみたい人
- 伊坂孝太郎のデビュー作品を読んでみたい人
- 人生に思い悩んだときにおすすめの本
『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎【あらすじ&概要】
あらすじ
コンビニ強盗に失敗した伊藤は、警察から逃げていた。
そんな中、外界との関わりを絶った「荻島」に辿り着く。そこは不思議な島であった。未来を予知することのできるカカシ、島で殺しを許された男、嘘しかいわない男など、風変わりなものばかり。
ある日、未来を見通せるはずのカカシが無残な状態で発見されてしまう。なぜ彼は、自分の死を阻止できなかったのか…。
おすすめポイント
外との交わりを絶った島に行きついた伊藤が、島で過ごす数日間の不思議な体験を描いた物語。
島で生活をするなか、謎が一つ、また一つ増えていく。謎の答えを追い求めて読書スピードと面白さが加速していく。
主要な登場人物
- 伊藤・・・本作の主人公。5年間システムエンジニアとして働いたが、28歳にして今は無職。コンビニ強盗をして逃げているときに、荻島に連れてこられてしまう。
- 静香・・・半年前まで伊藤と付き合っていた彼女。誰かに必要とされることを願っている。
- 優午・・・未来を予知することのできるカカシ。人の言葉を理解し、喋ることもできる。物語のキーパーソン。
- 日比野・・・伊藤に島を案内してくれた男。裏のない男であるが、知らず知らずのうちに人を傷つけてしまうタイプの人間。ペンキ塗りの仕事をしている。
- 轟・・・島で唯一船を持っており、外との行き来ができる。無口で、熊みたいな風貌の男。
- 園山・・・元画家。問いかけに、すべて反対のことしか言えない。
- 桜・・・島で彼だけが拳銃を持っており、彼の裁量において人を裁いている。島のルールであり法律であるため、島のものは誰も彼を咎めたりはしない。詩が好きで詩集をよく読んでいる。
- 草薙・・・島の郵便局員の青年。妻の百合にゾッコンである。
- 城山・・・コンビニ強盗をした伊藤を逮捕した警察官。他人を傷つけることで快感を得ている。法を犯しても捕まるようなヘマはしない、悪意の塊である男。
未来がわかるカカシ
島には、優午と呼ばれるカカシがいる。田んぼの真ん中に突っ立っているのだが、驚くことに喋ることができるのだ。その上、未来のことが分かるというのだ。
先のことが分かるというのは、一見すると誰もが欲しいと望むような能力に思うが、本当にそうなのか?っと本作を読むと感じてしまう。
人生を生きていくのに先のできごとが全てわかっていたら、そこに楽しみや面白みが存在するのか。知らないからこそ、味わえることがあるのだよ、と教えられているようでもある。
言い伝え
昔から島には言い伝えがある。「この島には大事なものが欠けている」というのだ。言い伝えは代々、親から子へ伝えられているそうなのだが、それが何なのかは誰も知らない。
こんな問いかけをされたら、それが何であるのか考えを巡らせてしまう。そして、知らず知らずのうちに、作者の巧みな技法に惹きこまれ、独自の世界観に飲み込まれていってしまう。
島のルール
島には独自のルールがある。悪いことをすれば、人は法により裁かれる。だが、この島では法の番人ともいうべき「桜」という存在がいる。桜は、島で拳銃を所持している唯一の人間だ。そして、彼自身の判断により相手を撃つのである。それについて島民は、誰も文句も言わないし、咎めたりもしない。
現代で当たり前と思っていることも、時代が違えば法律やルールが変化することはあるでしょう。しかし、同じ時代においてそのようなことはないはず。だからこそ、自分自身の常識がまったく通用しない世界があれば、そこは異世界のように感じてしまう。
優午が殺された
ある朝、それは突然にやってきた。優午がバラバラにされ無残な姿で発見されたのだ。島民たちの間には、混乱と哀しみがただよっていた。しかし、ふと一つの疑問が浮かんでくる。
「優午は、未来がわかるのではなかったのか」ということだ。なぜ自分の身におきることを回避できなかったのか?
本作における最大の謎が幕を開ける。作中に散りばめられた小さなエピソードや奇妙な疑問の数々が、やがて真実への道しるべとなっている。また、真実とともにわかっていく、優午の心情にも注目して読み進めるとより楽しめる。
感想・レビュー
主人公である伊藤は、仕事も辞め人生をリセット=逃げ出そうとしていた。それはつまり、自暴自棄になり、すべてを終わりにしようとしていたのではないだろうか。
そんな時に連れてこられた荻島。島の人びとは、それぞれが個性的でどこか現実離れしている。お伽の国に迷い込んだのでは、という錯覚さえ覚える。その一方で、島民にも現実世界と同じように、悩みや哀しみ、痛みを心の奥に隠しながら生活している。
それら一つ一つを感じ取ることで主人公の伊藤は、一度は幕をおろそうとした人生を見つめなおす時間を与えてもらえたようであった。生きていれば様々なできごとが起こる。島での数日のできごとのように。
良くないことも悪いこともあるだろうけど、それでもそれらを受け入れて、前に向いて進んでいくべきなのでは、というメッセージのようでもあった。なぜなら、人生は一度きりなのだから、と感じさせてくれる。
まとめ
見知らぬ孤島で過ごす奇妙な体験の数々。現実のようで夢のようでもある数日間の物語。
あなたも、この日常からかけ離れた世界に足を踏み入れてみてはどうでしょうか。
それでは、まったです。 (‘◇’)ゞ
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